自然との対話

 建築をする上で自然との対話は欠かせません。雨漏り、結露、歪み、シロアリ、腐食・・・など全てが自然との会話不足によるものです。

 以前に何かの本を読んだ時、「暖炉の設計をするときには煙の気持ちになればきちんと煙は外に流れてゆく」といった内容のことが書かれていました。ちょっと叙情的かも知れませんが、根っこの部分では確かにその通りだと思います。つまり、きちんと煙の排出について考え検討して施工すれば問題は発生しないということだと思います。

 屋根を設計する場合は、雨が降った場合に雨が溜まって排水できない場所が発生しないかどうか。構造を考える場合は、力の流れを考えて特定の部分に無理が生じていないかどうか。窓を設計する場合は、風がきちんと通り抜けるよう配慮したかどうか。また、日差しの入り方が適切かどうか・・・

 このように、一見当たり前のようなことばかりですが、設計は限られた空間に様々な機能・要望がせめぎ合いますので、最初は自然を考慮していた事柄がプランの変遷をたどるうちにいつの間にか自然に反してしまう事が時にあります。そのことをどこかで気がつけばまだ良いのですが、最悪の場合は誰も気づかずに後日問題となって水面下から浮上してきます。

 そうならないためにも、日々自然との対話を心掛け、自然を押さえつけるような設計ではなく自然を受け流す、すなわち自然と共存できる建築になるよう、日々の研鑽を続けなければなりません。

2010.10.28

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