時間に耐える建築

 洋服とかであれば、「流行がすぎたから」とか「破れたから」といった理由で比較的簡単に新しいものに買い替えたり、処分したりすることができます。しかし、建築の場合は建設コストが洋服とは桁違いに高いためなかなかそうはいきません。そこで出てくるキーワードは「時間」です。建物は一度建てたらよほどの理由が無い限りその場に数十年以上建ち続けます。その長い年月を風雪に耐え、人々の使用目的に応え続けなければなりません。

 建築のデザインにもはやりすたりがあり、街中を見渡すと概ねその建物が建った年代が想像できます。そんな中で、古い建物であっても非常に良い表情をした手入れの行き届いた建物を見掛けることがあります。そのような建物は、ひっそりと風景に溶け込んでいることが多いのですが、近づいて眺めてみるとそこかしこに創意工夫の跡がみられ心地いい雰囲気を持っています。

 時を刻みながらしっかりとその場に根付いた建築。そんな建築が理想です。そのためには建物も心身が健康でなければなりません。しっかりとした骨組みで体を支え、気象の移り変わりに耐える外装を身にまとい、メンテナンスのしやすさにも配慮が必要です。また、内装においても使い込むに従って味わいの増す材料の選定が大切ではないでしょうか。

 そして、建物の「こころ」は単純にいうとプランニング。少し格好良くいえば、構想力だと思います。そこを使う人々の様々なシーンを想像し、少しでも使い勝手の良い、少しでも穏やかに寛げる場所をつくることで建物に魂が宿ります。

 こうしてつくりあげられた建築であればあるほど、まわりの環境と共に長い年月そこに建ち続けることができ、時間に耐える心地いい建築になると考えています。

2010.10.26