創造力と想像力
創造力と想像力。発音は同じだけれども意味は結構違います。建築の仕事をしていると「創造」ということばはよく聞きます。「創造的な空間・・・」「新たな住まいの創造・・・」など。確かに、建築設計は土地がすべて異なっているのでほとんどが一品生産です。従って、一からスタートするので「創造」という言葉は非常に馴染みやすく、特に企画・計画段階ではコンセプトとして見栄えも語感も良くいい感じです。私も状況に応じて使ったりします。
一方「想像」はあまり聞かないし、使うことも「創造」に比べて少ない気がします。ただ、建築をつくっていく上で「想像力」は非常に大切なものです。「創造」にばかり気を取られて「想像力」が低下すると様々な問題が生じてきます。
たとえば、扉の開き勝手。人の動きをよく考えて「想像力」を働かせないと、いつも開いた扉をよけながら部屋に入らなければならなくなったりします。冷蔵庫の開き勝手も同様です。右側丁番タイプが基本なのでプランニングにおいて「想像力」に欠けると使い勝手が悪くなります。また、階段の照明器具を階段の途中の吹き抜け上部につけたりすると電球が切れたときの交換に一苦労です。
このように、「想像力」は設計する上での必要条件だと思います。設計過程では常にシミュレーションを繰り返しトライアンドエラーの連続です。また、現場監理においてもそれは繰り返されベストな建築になるよう努力が続きます。その上で更に「創造力」を発揮できたときにはじめて必要十分な条件が整い、より良い建築になるのではないでしょうか。
「創造力」で建築の本質を見極め、「想像力」できめ細かな使う人にやさしい建築づくり。両方の「ソウゾウリョク」を発揮できたとき理想の建築に近づけるように感じます。
2010.10.23