構造について
建築をつくる上で大切なことの1つとして構造があげられます。その建築に求められている要望・性能・耐火性・耐震性・予算などをふまえ、計画の段階からある程度構造を考慮しながら進めてゆきます。
木造
一番身近な構造が木造ではないでしょうか。平成20年度の国土交通省の「住宅着工統計」によると、戸建て住宅の85.7%が木造(ツーバイフォー・木質系プレハブを含む)です。割合として在来木造が72%、ツーバイフォーが10.6%、木質系プレハブが3.1%です。
一般的な在来(軸組)工法で設計する場合、尺貫法*1が今でも使われています。長さの1間とか3尺とかいわれてもピンとこないと思いますが、面積を表す坪は住宅の建築を考えた人であればなんとなく知っていると思います。建築費坪単価○○万円とか坪いくらの土地といった表現は多く、部屋などは約△△畳といった表現もよく目にします。また、合板(ベニヤ)なども3’×6’(サブロク 3尺×6尺 約畳1畳分)や4’×8’(シハチ)など、やはり尺貫法がメインです。
つまり、材料の流通が尺貫法が主であるため、それに合わせた方が材料の歩留まりが良く(材料のロスが少ない)、コストパフォーマンスがよくなります。従って、軸組工法で設計をする場合は基本を尺貫法で押さえ、尺貫法では納まりが悪い部分を一部メーターモジュールを採用するなどとした方が全体的に考えると良いと言えるでしょう。
ただし、多少費用がかかっても丸い部屋がいいとか、8角形のプランにしたいといった要望や土地の形状的に台形プランにした方が良いといったケースも当然発生します。また、柱を設けないで南側を大きな開口にしたいといった希望もあると思います。その時は、木造でもそれらに対応した工法を採用したり、一部鉄骨を入れたりするケースで対応可能です。ただし、「尺貫法が基本」これを頭の片隅に置いておいて下さい。
*1:建築関係では一般的にはSI単位を用い、長さはメーターで表します。従って木造の場合1間=1,820mm 1尺=303mmなどメーター単位に変換します。木造以外は基本的にメーター単位が主となります。
鉄骨造(S造)
鉄骨造でなじみ深いのは、鉄塔や橋梁など大型構造物や市場など広い空間の小屋組などです。また身近なところでは、スーパーやホームセンターなどでもその多くは鉄骨造です。鉄骨の特性として、コンクリートより軽い*1ので大スパン(柱間の距離のこと)構造の時に多く用いられます。
住宅でいうと、軽量鉄骨造の住宅やアパートなどが鉄骨系であり長所として工期が短くて済むことなどがあげられます。また工業化されているので、材料の品質や供給が安定しています。
*1:実際の比重は鉄骨の方が重いのですが、鉄を無垢で使うことはほとんど無く大体がH鋼などの形鋼であり、スパンが同じであれば鉄骨の方が小さな部材で済みます。
鉄筋コンクリート造(RC造)
現代の建築においてなくてはならない素材であるコンクリートを主要構造としたもの。鉄筋とコンクリートがお互いに弱いところをカバーした堅牢な構造です。耐火・耐震性に優れ庁舎、消防署、学校など防災拠点となる建物の多くはRC造です。また、多くの人が集まって住む集合住宅も多くはRC造です。一昔前は高層建物はSRC造、中高層はRC造でしたが、技術の向上や規制の見直し等によって10階以上でも普通にRC造で設計できるようになってきました。
ただ、コンクリートは比熱が高い(暖まりにくく冷めにくい)ので断熱計画を適正に行わないと冬はいつまでたっても寒く、逆に夏はコンクリートからの輻射熱で冷房をしても暑く感じられます。逆に考えると費用はかかりますが外断熱にすると室内の温度変化の少ない快適な住環境を得ることができます。
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)
主に高層建物や、構造的に強度が必要な場合に採用される構造です。RC造の柱や梁の中に鉄骨をいれます。鉄骨造とRC造の両方の手間暇がかかりますので構造的には一番費用がかかる構造です。
混構造
上記にあげた構造組み合わせたタイプです。1階をコンクリート造のガレージとして2、3階を木造とした住宅や、壁をコンクリート造として屋根部分を鉄骨造とした体育館などが混構造にあたります。
その構造の長所である耐火性、堅牢さ、軽さ、耐水性などを組み合わせることによって建設される環境にあった建築をつくることができます。