材料-外装-について
外装材料は建築の表情及び耐候性に影響を与えるものですので、その選定にあたっては様々な観点からの選定作業が必要となります。
屋根(陸屋根防水を含む)
屋根の最大の役目は雨や雪を防ぐことです。そして、もう一つの重要な役目として直射日光を遮ることが挙げられます。以前、建築雑誌で外部が(内部も)全てガラスでできた家を見たことがありますが、これは非常にレアな例ですし本当に人が住むのかも疑問です。
屋根は雨にも負けず、風にも負けず、雪にも夏の暑さにも負けぬ丈夫な”材料”でできていなくてはなりません。あらゆる気象状況をまともに受ける場所ですので、材料選びはもとより施工も充分に注意して行わなければなりません。
◇瓦
瓦は西暦588年頃に百済から伝えられ、その後日本の気候風土に合わせて改良されてきた歴史があります。素材としては耐候性に優れ、ほぼメンテナンスフリーで30年以上は問題ないとされています。
短所ではありませんが、イニシャルコストがかかることと、他の屋根に比べて重いため地震力の算定にあたっては条件が厳しくなります。また、一般的に屋根勾配は4寸以上必要です。
◇スレート
天然スレートは粘板岩でできた薄い板のことを指し、東京駅の屋根材はこの天然スレートが使われています。趣があって良いのですが高級材料です。
一般的にスレートというと、セメントと補強繊維などを主原料として成型したものを指します。以前は補強繊維にアスベストが使われていましたが、平成18年9月1日より全面禁止となり、現在はビニロンなどの有機繊維を補強繊維として使用しています。
軽さ、施工性、コストバランスなどからよく使われていますが、色褪せや耐候性の劣化などにより定期的なメンテナンスが必要です。商品によっては耐候性を上げたものもあります。一般的に屋根勾配は3寸以上必要になります。
◇金属板
ステンレス鋼板、ガルバリウム鋼板、銅板などを材料とした屋根で、厚さ0.35mm~0.5mmの長尺の材料で屋根を葺きます。葺き方によって、横葺き・瓦棒葺き・立てはぜ葺きなどのバリエーションがあります。
材料及び表面の塗装材料によってメンテナンスの期間が変わってきます。軽量で防水性・加工性に優れるため、葺き方によっては0.5寸勾配程度から葺くことができます。
◇FRP防水
陸屋根の場合の防水方法です。厳密にいうと防水の分類ですが、他の屋根と比較しやすいのでここに記述します。(次のシート防水も同様です。)
原則1/50勾配(メーカー基準があればそれ以下でも可)以上の排水勾配を取り、液状の不飽和ポリエステル樹脂に硬化剤を混ぜたものをガラス繊維の補強材と組み合わせて一体的な防水層をつくって防水します。可塑性がある材料なので、複雑な形状にも対応可能です。一般的に防水の保証は10年間です。
◇シート防水
ほとんどはFRP防水と同様ですが、材料に塩化ビニール樹脂などシート状になった材料を使用します。シートの立ち上がり端部を金物で押さえるので、納まりが複雑にならないような工夫が必要です。
外壁
◇窯業系サイディング
セメント質と繊維質を主な原料にして厚さ12~25mm程度の板状に形成したもので、木軸に対して横若しくは縦に張ってゆきます。ほとんどの製品は防火構造等の防火性能を備えています。
耐火性、耐候性などの諸性能に対してコストバランスが良く、デザインの種類も豊富なため、日本の戸建て住宅の多くはこの仕上げを採用しています。ただ、その多くは「タイル風」「石張り風」「板張り風」「塗り壁風」といった模倣品が多いため個人的には積極的に採用したいとは思いません。
◇金属系サイディング
鋼板を15~25mm程度の板状に加工したもので、多くは中に断熱材を充填しています。鋼板を凹凸に加工して強度をつけた角波やスパンドレルも金属系の外装材です(鋼板のみで断熱材はなし)。
窯業系と同様に○○風のタイプと、金属の素材感を出したタイプの2種類があり、素材感をだしたタイプは金属屋根と合わせることによってモダン系の建築に多く使われています。
◇木質系サイディング
大きく分けて2種類あります。1つは専用の金属サイディングを下地として専用の金具で木の板を順次留めてゆくタイプのものです。防火構造の認定を取得しているので、市街地で外壁が延焼ラインにかかる場合でも使用が可能です。
もう1つは今風に言えばサイディングですが、単純に木の板を外壁に張るタイプのものです。下見板張りや本実加工など色々な工法があります。防火構造等が必要な場合は対策が必要です。
自然素材で外壁を包み込み、経年変化と共に味わい深さが増しますが、色はあっという間に変色してゆきますので、それらの変化を楽しめて定期的なメンテナンスも楽しみの一つと考えられるかどうかが選定のポイントになります。庇を出すなど外壁が常時雨掛かりにならないようなデザインの方が持ちが良くなると思います。
◇モルタル・塗り壁
木造の場合は下地にラス金網を取付けてそれにモルタルを塗ってゆきます。左官屋さんが手作業で塗りますので、窓が丸や三角でも壁がR形状をしていてもカタチに合わせて壁をつくってゆけます。形の自由度はありますが、その分職人さんの腕次第で仕上げの出来が左右されます。
また、注意点としてはひび割れがあります。材料上やむを得ない事ですが、養生期間をしっかり取るなどしてひび割れの発生を極力抑える工夫が必要です。作業工程が多いので、工期に余裕を持たないと後で問題が発生する可能性が高くなります。
仕上げには、各種仕上げ塗材(リシン、複層仕上げ塗材・・・etc)や塗り壁材料(マヂックコート、ジョリパット・・・etc)で仕上げます。掻き落とし、櫛引きなど様々なテクスチャーが楽しめます。
◇タイル
耐久性が高く、種類・色・デザインも色々とあります。値段もピンキリで、粘土の選定から試し焼きをする本格的なものから、量産された規格サイズのものまで幅広くあります。
RC造の場合は躯体との馴染みが良いのであまり問題はないのですが、鉄骨造や木造の場合は工夫が必要です。躯体が地震や風で動くのでそれに追従できない場合はタイルに割れが発生したりします。従って、タイルを下地に引っかける乾式工法やモルタルを使わない弾性接着剤張り工法など工法の比較検討が必要になります。
◇コンクリート打ち放し
力強い素材そのままの仕上げです。現在は仕上げ方法のひとつとして認知されてきてますが、まれに打ち放し仕上げと打ち放し(やりっ放し)もしくは左官補修仕上げを混同している現場監督がいるので、その場合は共通の認識を持つまでが大変です。
一般的に打ち放し仕上げの場合は、専用の新品型枠を使いピーコン割りをして規則正しくピーコン跡が並ぶようにします。また、鉄筋のスペーサーを専用のものを使い、結束線が型枠に接触していないかチェックします。最近は結束線がメッキ品を使うようになってきたので結束線からの錆汁の心配が減りましたが、他にも色々と気を廻さないといけないことが多いので、現場の人はあまりいい顔をしません。
汚垂れ防止の金物を付けたり疎水剤を塗布することによって、長期に渡って美観が保てるようになりますので、可能であればそのような対処をしたいと考えています。
窓
◇アルミサッシ
現在の主流の窓です。耐久性、耐候性、気密性などに優れ、建築の構造を問わずスタンダードに使われています。
木造サッシは規格化されており、尺モジュールに対応したものが主流です。コストを抑える場合は規格品(既製品)を主に選定し、必要に応じてイージーオーダー若しくはオーダーサッシを使用します。
集合住宅などのビル用サッシは、システムサッシとなっておりmm単位で設計したサッシを工場で加工組み立てします。特殊な場合はサッシの型材から起こす(特注品)作り方もあります。
また、フロントサッシと呼ばれる店舗用のサッシもあります。木造建築で、設計の諸条件からビル用サッシやフロントサッシを転用する場合もありますが、別の用途を主体に考えられているので諸性能に対して検討が必要となります。
◇スチールサッシ
以前は広く使われていましたが、気密性、耐候性、可動性などに優れるアルミサッシの台頭によって次第に使用範囲が少なくなってきました。ただし、材料強度が高いので、シンプルな空間が求められる場合などに使われます。ガラス以外に何もない広い開口部にしたい場合など、サッシの枠自体の存在を消したい場合などはスチールサッシを使うことによって緊張感をもった空間を創ることが可能になります。使用する場合は、目的、用途、防錆対策などの検討が重要となります。
◇木製サッシ
アルミサッシが普及する前の木造建物の外部建具は、木製建具が中心でした。アルミサッシの出現によって、気密性、防腐性、寸法の安定性等に優れるアルミサッシが木製建具にとって変わってゆきます。そして、アルミサッシがスタンダードになってくると共に建物の気密性も向上し、今度はアルミサッシに対する結露などが問題視されるようになります。
このような背景から今度は木製サッシが登場します。以前の木製建具は、建具廻りの枠を大工さんがつくり、建具は建具屋さんがつくっていましたが、木製サッシは枠と建具を同時製作しその気密性を向上させています。
コスト的には一般のアルミサッシに比べて割高ですが、木の持つ質感や結露のしにくさを求めて採用する場合があります。コスト的にすべての窓で使用できない場合は、主要な開口部だけを木製サッシにする場合もあります。ただし、天然素材であるため建具調整や塗装など定期的なメンテナンスが必要になります。
ガラス
現代の建築にとって、ガラスはなくてはならない素材のひとつです。建築基準法的に言えば、屋根及び柱若しくは壁があれば建築物となりますが、多くの建物は壁に窓を設けて外の光を建築内部に取り入れます。そのことによって、外と内に厳密に分断されていた空間に中間領域が生まれ、生き物にとっての快適な環境が生まれます。そのフィルターとしてガラスが用いられます。
◇フロートガラス
いわゆるガラスと呼ばれるものの代表的なものです。耐風圧等によってその厚さが決められますが、想定以上の外力がかかると割れます。破片は鋭利な形状になるので、触ったり刺さるとけがをします。
◇型板ガラス
基本的特性はフロートガラスとほぼ同様ですが、大きな違いはガラスの向こうがはっきりと透けて見えないことです(ぼんやりと影などは映ります)。風呂、トイレ、更衣室など、室内に光を入れたいけど中をはっきり見せたくない場合などに使用します。
◇網入りガラス
フロートでも型板でもありますが、防火上、安全上に配慮したガラスです。窓が近隣から炎であぶられた場合に、金網と一体になった窓ガラスが炎の侵入を防ぎます。また、人がぶつかった場合にガラスの破片を飛散させずにケガを防止します。
◇強化ガラス
ガラスに熱処理を加えた後、急激に冷却することによってガラスの強度を上げたものです(ガラス表面に圧縮応力が加わり強度が上がる)。厚さによって強度が変わりますが、同じ厚さのフロートガラスに比べて3~4倍程度強度が上がります。人がぶつかった程度ではまず割れることはありませんが、先端の鋭利な金属などで1点に集中的に力を加えると粉々に破壊します。
◇ガラスブロック
150mm角や200mm角などブロックの形状をしたガラスです。丸や長方形など色々な形、サイズがあります。ブロック内部に真空に近い空気層があるため、一般の板ガラスより断熱性、遮音性に優れます。ワンポイントとして使ったり、スクリーン的な壁として使ったり、建築のアクセント的に使われることも結構あります。
◇ペアガラス(複層ガラス)
2枚のガラスの間に空気層を設けて断熱性能をあげたガラスです。5FL+12A+5FL(5mmのフロートガラス2枚の間に12mmの空気層の意味)などと表記したりします。最近の住宅などでは断熱性能の向上が進み、熱損失の高い窓ガラスをペアガラスにすることも一般的になりつつあります。
◇Low-E複層ガラス
複層ガラスの内部に金属膜をコーティング加工してあるガラスで、断熱タイプと遮熱タイプがあります。断熱タイプは部屋側のガラスの内面に金属膜があり、熱の出入りを低減させるため暖房効率が向上します。もう一方の遮熱タイプは外側のガラスの内面に金属膜があり、太陽の熱線をカットするため冷房効率が向上します。
扉(ドア)
◇アルミ製扉
種類、サイズ、デザイン等が豊富で、一般的な戸建て住宅によく使用されます。建物全体のトーンに合わせないと、玄関扉だけが自己主張した建物になってしまいますので注意が必要です。
◇スチール製扉
集合住宅の玄関扉は、防火性能を求められることが多いのでほとんどがスチール製扉となっています。表面仕上げは、焼付塗装、化粧鋼板、現場塗装などがあげられます。
◇木製扉
一部の住宅や福祉施設のエントランス扉などに使用される場合があります。自然素材なので、雨掛かりを避け直射日光があたらない場所での使用が望ましいと思います。定期的なメンテナンスが必要になります。